抗がん剤EC投与3回目の一泊入院の前日。私はかなりナーバスになっていた。
体調が回復して、すっかりいつもの調子で動けているのに、またあの副作用の苦しみに襲われるのか、と。
それなのに九州方面・車中泊の旅に出掛けた夫から送られて来るLINEの画像や電話は、とっても楽しそうで。
「宮崎に着いたよ。海がとーってもキレイだ。良い所だね。」と、ルンルン気分(←古い)。
「素敵な海だね。こっちのことは気にしなくていいから、1ヵ月でも2ヵ月でもゆっくりして来るといいよ。」という私の素っ気ない物言いから、何かを察したのか、夫は夜になってまたLINEをくれた。
「明日は別府温泉につかってから、フェリーで四国経由で帰ろうと思う。後は出来るだけ早く帰るように努力するよ。」「3回目の抗がん剤も大変と思いますが、何とか頑張って。職場で休みをもらってるのに、旦那は遊んでいるのでは体裁が悪いね。」
そして、「すみません」のスタンプ。続いて「申し訳ありません」のスタンプ。
ウチの夫は、こういう「仲直りスキル」に長けていて感心する。入院前の憂鬱もちょっとほどけてほっこりした。
夫の「定年退職後にやってみたいことNo.1」は「九州方面へ車中泊の旅に行くこと」だったので、私の抗がん剤治療のためにあきらめさせるのは、大変忍びなかったのだ。
なので、「旅行に行くなら、このタイミングで。今がチャンスよ!」と、私が背中を押した。
しかし、いくら何でも次回入院前には帰って来るだろう、と期待していた。その当てが外れてガッカリしてモヤモヤした、という勝手な話。
正直にぶつけるのもなぁ、と思って、一人で勝手に葛藤していた。
ああ、なんて面倒臭いのよ、私。
翌日、抗がん剤ECの3回目投与が無事に終わった。特に問題もなく、自分一人で入院して退院して来た。気分はスッキリ。夫に迷惑を掛けてしまった。
ジョン万次郎、足摺岬。高知は幕末の偉人がたくさんいて、資料館は面白かったらしい。
「出来るだけ早めに帰れるようにするから、それまで一人の生活を十分に楽しんでね。」「わかった。良い旅を。」と、お互いにエールを送り終了。
14年間単身赴任だった夫と、いつもこんなふうに付き合ってきたはずなのに、近くにいるのが普通になると、頼り切って当てにしてしまうのだ。12年前の1回目乳がんの時は、何でも自分でやっていたのに。
その心意気を忘れないようにしよう。