行きつけの美容院でカットしてから3ヵ月。伸びすぎちゃってハネやすくなり扱いに困る。ブローしてもうまくまとまらない。こりゃあ、そろそろ美容院に行かなくちゃ、と思っていた。
行きつけの美容院は抗がん剤で脱毛するかなり前から通っていて、お気に入りの男性美容師さんがいたのだが、少し前に他店舗に異動になった。ボソボソ喋るけど面白くてカットが上手な美容師さんだった。新しい担当の方に切ってもらうと、直後から髪の毛がハネてうまくまとまらず、なんだか不満を抱えたまま3ヵ月が経過した。
会話が盛り上がらなくてもいい、接客がイマイチでもいいから、腕の良い職人気質の美容師さんに切ってもらいたい！と思って、あちこちキョロキョロ。通勤途中にありながら、最近まで気づかなかった美容院に行ってみた。とりあえず、自分の直感を信じてみよう、と。
椅子は3個しかない小さな美容室。30才くらいの男性美容師さんだった。
白髪隠しのためヘアマニキュアをしてからカットしてもらった。前髪カットに取り掛かろうとして頭頂部を見て、「・・・ずい分産毛が多いですね？」と言われたので、「実は、二年前に乳がんで手術をして抗がん剤の治療も受けて、全部脱毛して生えてきた所なんです。だから、このあたりがまだ薄かったり短かったりして。」と答えた。襟足や後ろの方は治療前より多くなったくらいですごく伸びたのに、てっぺんの方はちょっとボリュームがない。年齢とか更年期とかも関係しているのかも知れないが。
「そうですか。大変でしたね。・・・でも、すごく早期で見つかったんでしょ？」「ええ、まあ。」一般的には、「がんは早期発見なら大丈夫」というのが常識的に信じられているので、私はとりあえずそれでいいや〜と流すことが多い。
しかしながら、「この人は乳がん患者で抗がん剤治療までやった人」というイメージで固まってしまうのってどうだろう？気を使わせてしまうのも嫌だな〜、なんて思っていたら、「うちの母は1ヵ月で亡くなったんです。膵臓がんでした。母は29才だったそうです。僕はその時5才だったので、記憶も全然残ってなくて。」と美容師さん。5才・・・可愛い盛りでどんなにか心残りだっただろう。美容師さんのお子さんは2才と5才。自分がこの年の頃、母親は・・・と思うと辛いだろうな。
さて、産毛や短い毛が多くてボリュームがイマイチな頭頂部について。
「頭皮マッサージをするといいですよ！頭皮が硬くなってるから、それをゆるめるだけで全然違いますよ。冷え性とかはないですか？頭皮や髪の毛って、何だかんだいってもアナログなのが一番いいんです。高価なトリートメントだの何だの、全然いらないっす。頭皮マッサージが一番効きますよ！わざわざそれをやるのは面倒になるので、シャンプーの時に意識してマッサージすればいいんです。あと、根元からふんわりさせるようにブローすることですね。上から押さえるとペチャンコになってハネます。」
おお、頭皮マッサージ！！いいこと聞いた。それにしても、ちょっと触っただけで、「頭皮が硬くなってる」とわかるなんて。さすがプロ。
カットしてもらってる間、ハサミの音を聞いていたけど、腕は良さそう。丁寧だ。多分、次回もまたここに来るだろうな。
