rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

がん常識の嘘〜渡辺亨〜

腫瘍内科医・渡辺亨先生の本をブックオフで見つけた。2006年2月発行なので情報はちと古いが、興味深いことが山盛りで、まだ読みきれてない。

第二章 早期発見・早期手術だけではがん医療は不十分より

・「早期発見・早期手術が治癒の鍵」と言われ、早く小さいうちに見つければ治るのでは?と思われていた。しかし、がんにも様々な顔があり、タチの良いものも悪いものもある。
・がんの治療に当たっている医師は、早期がんと診断されていたのに、すぐに遠隔転移が認められるということをしばしば経験している。
・がんの個性を明らかにするさまざまな検査方法が開発されてきた(DNAのマイクロアレー解析)。乳がんでは、免疫組織染色(ホルモン受容体検査やHER2検査)という方法がすべての患者さんに行われる。
・HER2遺伝子が活発に働いている乳がんはとてもタチが悪く、どんどん転移する。短期間に患者さんを死に追いやる。ならば、このHER2遺伝子の働きを抑えられないか、ということで研究が進み開発されたのがハーセプチン
・HER2タンパクは乳がん細胞の表面に無数に林立して、細胞の外からの増殖刺激を受け取るアンテナのようなもの。このアンテナだけを選択的に麻痺させてしまうような働きがハーセプチンにはある。
・タチの悪い暴れん坊のがんの場合、検診で早く見つけても、自分でしこりを見つけても死亡時期は同じ(リードタイム・バイアスの落とし穴)。闘病期間の開始に時間を足すだけで後ろに足すことが出来ない。

ハーセプチンの日本への導入にあたっては、著者(渡辺亨医師)が国立がんセンターに勤務していた頃(1995〜96年)、臨床試験に携わっていた。乳がん患者の2割前後がHER2陽性。当時、著者はHER2の基礎研究をしており、ハーセプチンの治験総括医師となったが、承認されるまでは苦労の連続だったのだそうだ。

アメリカやヨーロッパでは1998年に薬剤として承認。2000年日本の厚生省(当時)もハーセプチンを承認(再発患者のみに適用)。2008年2月から術後補助療法への使用も認められた。

第六章 抗がん剤は世代交代が起きているより

・(ハーセプチンは)最初は夢物語として語られ、「そんなものは効かない。試験をやる意味がない。」と言われていた。いざ治験を始めてみたもののこれがまたうまく行かず、患者集めも苦労した。
・まったく予想もつかない副作用も経験した。日本で初めてハーセプチン投与を受けた患者→30分たった頃、「寒い、寒い」とガチガチと震え始め、唇は紫色、ベッドがガタガタと音を立てて震えるほど。やがて顔が真っ赤になり40℃の熱。「あつい、あつい」とほてり出した。→アナフィラキシーショックハーセプチンを中止してステロイド剤を投与。→20〜30分ほどで落ち着いた。
・「重篤な副作用」とのことで、それ以降この患者さんにはハーセプチンを投与しなかったが、驚いたことに、その後、皮膚転移、肺転移が全部消えた!!
・効く時には劇的に効く。末期で救急車で担ぎこまれた人が、元気になって社会生活に復帰したりしている。
乳がん術後治療においてハーセプチンを使用すると、「再発率が50%抑制される」というデータがある。(三つの臨床試験で同様の効果)

乳がん患者の中で、ホルモン受容体陽性でHER2陰性は7割。ホルモン陰性でHER2陽性は1割。ホルモン陽性でHER2も陽性(私もこのタイプ)は1割。どちらも陰性は1割。
ハーセプチン適応のみなさん、がんばって生きましょうね。