rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

サイモントン療法の本

がんのセルフ・コントロール−サイモントン療法の理論と実際−

「同じ診断を受けながら、なぜ、ある患者は回復し、ある患者は死亡してしまうのか。」カール・サイモントン医師の研究はこの疑問からスタートしたのだという。

多くは次の治療の予約日まで生きられないかも知れないと予想された方たち。その中にも、わずかな期間で回復し、何年か経っての定期検査の時点においても、予想に反して健康だった人たちが居る。

「自分の息子が大学を卒業するまではとても死ねませんよ。」「私の職場では私を非常に必要としているものですから。」「娘の問題を解決するまでは、とても死にきれませんので。」
などの患者の返事から、「患者自身が自分の病気の経過に何らかの影響を与えている」ということに気づいた、と。健康を維持している患者たちは強力な、“生きる意志”の持ち主であった、という事実。

「癌を引き起こす心理的要因」として、
・子供時代に孤立し、他人から無視され、絶望感を抱き、困難かつ危険な、しかも非常に緊張した人間関係の中で生活してきた。
・成年期の初期において非常に充足した人間関係を営み、自分の職業に満足していた。そこに生きがいを見出し、それを生活の中心とし、相当のエネルギーを注いでいた。
・しかし、このような人間関係や職業を失うといった経験をし、子供時代の心の傷が甦り絶望感に襲われるようになった。(相手の死亡、転居、子供の独立、退職など)
・この絶望感を心の内に貯えているということが、患者に共通して見られる基本的な特徴の一つ。さらに、心痛、怒り、敵意などの感情を表出できず、他人に“感じのよい人”という印象を与えるような振る舞いをしてしまう。
ということがあげられるようだ。

実験・臨床心理学者のローレンス・ルシャン博士の研究では、76%の人の生活歴が酷似していて、博士の心理療法を受けた患者の95%が同じような経歴を持っていた、とか。

この本は1982年9月に発行された本で、引用されているデータもすべてかなり古いものではあるけれど。他の人の研究では、「腫瘍が早く成長した患者は他人に自分をよく見せようとする傾向が強く、自己弁護しやすい反面、不安な気持ちに駆られやすい、という傾向がある」なんてものもあるようで。(私か?)

占い師がよく使う手法で、“コールドリーディング”なんてものがあるが、それと似ているような感じが無きにしもあらず?誰だって、「幼い頃、とても苦労して育ったでしょう?親の愛情が十分に受けられないところがあったり。学校ではいじめられたりしたんじゃないの?」なんて言われれば、そうかも〜?と思ってしまいそう。

それと、文中の癌患者の体験談には、「子供たちが独立して遠くに行ってしまい、“空の巣症候群”になってしまった婦人の発病」というようなものも多かった。これはある意味仕方のないことだ。誰の人生にも起こりうることだし。

「他人から感じの良い人と思われたい」と思うことも、普通に悪いことではない。なので、この分析に関しては、私は、全面的に受け入れるのはどうかな〜、と思うのだ。

面白かったのは、「健康の回復に至る心理的プロセス」というところ。(p106)
1、生命に関わるような病を発病したことを知ることにより、自分の生活上のさまざまな問題について、新しい視野を得るようになる
2、これまでとは違った行動をとり、別な生き方をしようという願いを持ち始める
3、生への執着心が再び甦るという心理状態に対応した生理的現象が身体面に表れ、さらに、それがその人の心理状態に影響を与える
4、健康を回復した患者は、以前よりもっと健康な状態になる

「癌を経験して、今まではすごく気になっていたことが、さほど重要なこととは思えなくなってくる。我慢しないで自分を主張したり、自分の願い事をかなえる行動に出たりするようになる。」という所を読んで、「あっ、これわかる!」と深〜く納得。ここが変わるから行動様式も変わり、それまで見通しの立たなかった問題の解決の糸口も見えてくるようになる。自力で解決し、より健康になる、ということらしい。

さて、一番最初の「なぜ特定の患者が治療に特に良い反応を示すのか」という疑問への解答を求めて、著者(カール)は患者にインタビューを行い、「いずれの患者にも非常に強力に生き続けたい理由があり、しかもその理由を非常に詳しくのべることが出来るばかりか、自分の病状が異例にも好転したのは、自分の生きる目標にこのように強く執着しているためだ、という考えを共通して持っていた。」ということがわかったのだとか。

「是が非でも重要な目標を達成したいという気持ちになることが、癌の患者が健康を回復するために必要な精神的強さの大きな根源なのかもしれない。」という結論に達したらしい。

サイモントン療法は、“癌のイメージ療法”として有名である。抗がん剤ハーセプチンの投与を受けるにあたり、どんなイメージを持てば効果的なのかな?という興味から入手したのがこの本だった。

がん細胞や白血球のイメージについては、患者それぞれがいろいろなイメージを持って絵にしてあり、治療効果とともに絵やイメージも変化していくのがユニークだった。しかし、「じゃあ、一番理想的なイメージの仕方って?」というところがイマイチ伝わってこなくて、頭の中はまだ???マークでいっぱいである。イメージ、難しいな。

“イメージ療法”とのことで、(もしかしてトンデモ?)なんてチラリと思ったりしたのだが、カール・サイモントン博士は放射線科の医師であり、「病院での検査・治療を受けながら行うこと」というような記述が随所に見られるので、トンデモではないように感じる。

再発した場合の心構え、死の恐怖の克服、家族の支え方、などなど、現実的で重要な事柄についても盛りだくさんだ。読むのに時間が掛かってしまい、前半の内容がちょっと薄らいでしまった。化学療法に入る前に読んでおけば良かったかな〜、とちょっと後悔。