rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

近藤誠「再発・転移の話をしよう」を読んで


がん患者にとって、再発・転移について医師から詳しく話を聞く機会などはほとんどない。ネットの情報やご本人が書いてるブログや、たまたま知り合った再発患者さんなどから聞く以外に手立てはないのだ。

治療に当たっている医師は、日々どんなことを考えて、再発・転移患者と向き合っているのだろう。近藤誠氏の“がんもどき理論”についての詳細も知りたくて、この本を手にとってみた。

近藤氏によると、
「本物のがん」→転移があって命を奪うもの
「偽物のがん」→転移がなくて大きくはなるけど命は奪わないもの
ということらしい。


胃がんのデータから「がんもどき」について説明されていた。
早期がん全体で2500人いるとして、そのうちの2%(50人)が本物のがんで、あと2%(50人)が偽物のがん。残りの94%(2400人)が「がんもどき」。「がんもどき」は、がんではないけど治療を受けることになってしまう。そのため、早期発見により、治らないがんの数は変わらないのに、率としては治ったがんが増えたように見えてくる、というわけだ。

「1期でも臓器転移がある人がいる。転移は原発がんで発見した時から“ある”としか考えようがない。」なので、転移してる比率がもともと決まっているとしたら、治療してもムダという考え方のようだ。

「転移」というと、初発の治療の後から出てくるようなイメージだったが、最初からすでに微小転移していたものが後で大きくなって出てきただけ、というような捉え方をしているらしい。

乳がんの転移が出ないところ、心配する必要のないところ。
「肩より先の腕の皮膚、腹部、足、背中の皮膚には出ない。皮膚の場合はだいたいが胸に出る。子宮に転移することはまずない。卵巣にも飛びにくい。どんながんも、子宮、膀胱、胃、大腸、小腸、食道などへは転移しにくい。乳がんの場合は他のがんにかかる確率は一般の人と比べて高くない。」

乳がんの場合、転移しやすいのは肺、肝臓、脳、骨など。それぞれの場合どのような経過を辿って行くのかも詳しく書かれていた。

この本は乳がんを素材にしてがんの再発・転移について語られているのだが、「乳がんを理解すればすべてのがんを理解できる」と言っても過言ではないからなのだそうだ。くじ引き試験のデータが一番豊富に揃っていて、がん治療の三点セット(手術、放射線抗がん剤)が用いられ、ホルモン剤も効くから、ということによるらしい。

乳がん患者団体・イデアフォーの方たちと近藤医師とのQ&A方式で進められていくので読みやすい。熱心に読んでいたら次男が心配して、「それって医者が言いたいことを言うための方策じゃない?マインドコントロールされそうだよ。それに対する批判を書いてるものも読んで、冷静に対処しないとね。入れ込まないようにね。」と、釘をさしてくれた。

この本が発行されたのは2003年11月。
驚いたことには、当時は近藤医師も抗がん剤治療を普通に行っていたのだ。現在のように、「抗がん剤は効かない!」と強く主張していない。現在とは治療の仕方は大分違うと思うが、「がんもどき理論」はこの頃から変わっていないようだ。

最後に疑問に思うのは、「じゃあ、どうすればいいの?」ということ。
「様子を見ましょう」「放っといても大丈夫」みたいな結論が多いので、がん患者としては納得出来ない。悶々としたままで終わってしまう。なんとかしようとして治療法が進歩して現在に至ってる、と思うので、腑に落ちない思いを抱えて終わってしまった。