rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

「大往生したけりゃ医療とかかわるな」を読んだ


大往生したけりゃ医療とかかわるな
中村仁一 幻冬舎新書

著者の中村仁一氏は、中小の病院で勤務医として働き、退職後に特別養護老人ホーム常勤の配置医師となった。この本を書いた当時は12年目で、最後まで点滴注射も酸素吸入も一切しない(医療的な措置をまったくしない)「自然死」を数百例も見せてもらえるという、得難い体験をしたそうである。

がんでさえ、何の手出しもしなければ全く痛まず穏やかに死んでいく。以前から「死ぬのはがんに限る」と思っていたが、年寄りのがんの自然死60〜70例を経験した今は確信に変わったそうだ。

20年以上も前から、「死ぬのはがんがいい」「がんに限る」と言い続けてきたという著者。それには二つの理由があるのだそうだ。
・一つは、周囲に死にゆく姿を見せるのが生まれた人間の最後の務めと考えているから。しかも、じわじわ弱るのが趣味なので、がんは最適。
・二つ目は、救急車は呼ばない、乗らない、入院しないをモットーにしているので、比較的最後まで意識清明で意思表示可能ながんは願ってもないもの。
とのこと。

がん死は死刑囚である私達に近未来の確実な執行日を約束してくれる。そのため、きちんと身辺整理が出来、お世話になった人たちにちゃんとお礼やお別れが言える。得難い死に方、なのだそうだ。

また、がんイコール強烈に痛む、と連想されるが、さんざんがんを痛めつけても、痛むのは7割程度で、「3人に1人は痛まない」「年寄りの場合は、がんに対して何ら攻撃的治療をしない場合、まったく痛みがない」のだそうだ。実例をあげて説明されていたが、これは意外だった。

余命数ヵ月と言われて病院から老人ホームへ帰って来た人たちは、老衰死のコースを辿り安らかに穏やかに亡くなる方も多かったそうだ。(無治療、完全放置の場合)

91歳女性の乳がん写真も載っていた。発見から4年で亡くなられたとのこと。治療はしていないので、乳房が崩れて出血し乳首もなくなっていた。一部腐って膿んでいたので、かなりの臭いがあたりに充満し、手当も必要だったらしいが、老衰死コースで亡くなられたとのこと。乳がんをずっと無治療で放置していて、膿んで滲出液まで出てきて、パッドをあてて自分で処置していた、という方の体験談をネットで読んだことがあり、それを思い出した。現実的にはかなり大変なことだとは思うが、91歳女性は穏やかに亡くなられたと知って、ちょっとびっくり。

老人だからこそ、がんではあっても寿命・・・という捉え方も出来るのかな。私達くらいの年代の場合はどうなのだろう?そんな疑問への解答は得られなかったので、そこがちょっと残念である。