高校時代からの友人Yちゃんは、ミスコンテストで優勝したほどの美女である。彼女は若い頃、モテモテだった。
「彼氏と別れた。」と言う噂が広がるや否や、「ぜひ付き合ってください。」という人が次々現れ、途切れることがなかったほどである。
「自分の心をゆっくり見つめ直す時間も、新しい相手のことを考える時間もないの。それはそれで、なかなか辛いのよ。」なんてことを当時言っていたのを思い出す。
美人というのは良いことばかりでもないようだ。
私の周りを見回しても、「友達だと思って気さくに付き合っていたら、ある日真剣に告白されて、断るのがすごく気まずかった。」「友達の彼氏、と思っていたら一方的に好きになられて。友達とも気まずくなって大変だった。」「訪問販売の人に襲われそうになって怖い思いをした。」などと、日常的にアクシデントに遭遇することも多いようだ。
私は全然モテなかったので、二股掛けただの掛けられただの、不倫がどうしたこうしただのという経験はない。モテない代わりに平和でもある。
職場の休憩時間に夫婦喧嘩の話をしていたら、Zさんが突然言い出した。
「この頃、若い頃に二股かけて付き合った末に、ひどい振り方をした元カレのことを思い出すのよ。胸が締め付けられるの。こんなふうに急に思い出すなんて、元カレの身に何かあったのかと思って。ネットで調べてみたりしちゃうの。」
穏やかではない話だが、だから何か行動に移す、というわけでもなさそうである。
現在の夫と知り合った頃、付き合っていた彼がいたZさんは、二股を掛けていた時期があったそうだ。悩んだ末に夫を選び、元カレを振ってしまった。納得出来なかった元カレは、少しの間Zさんに付きまとったりしたらしいが、しばらくして新しい彼女も出来て離れて行った。
「若い頃はスタイルも良くて可愛かったんだよ。」と、夫さんが娘さんに言っているという話をよく聞く。今もキレイだから、若い頃はかなり痩せていておしゃれでモテモテだったのだろう。
しかし。あれから約30年。元カレはひどく傷ついたとしても、それを今現在まで引きずっているのだろうか?元カレだって、立派なオジサンになっているはず。私たちも立派なオバサンではないか。
調べて本人を見つけた所でどうするのだろう。今の生活を壊す気なんて、サラサラないはずなのに。
若い頃、痩せていてスタイル良くておしゃれでモテモテだった、という話をする人は、若い頃の写真を持ち歩いていて見せて来たり、何度も何度もその話をするけれど。
どういう心理状態なのかな?と、非モテの私はいつも思う。