rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

「がん・ステージ4からの眺め」という記事を読んだ

毎日新聞 2017.12.3 東京朝刊で、「乳がん体験者コーディネーター」として患者会「虹の会」などで活動されている田村博子さんの体験が取り上げられていたとのこと。Facebookのがん患者会で話題になっていたので、こちらにも引用させていただいた。

がん・ステージ4からの眺め
医師と対等な人間関係を

 医療の進歩により、最も進行度が高い「ステージ4」のがんでも、より多くの患者が「がんと共存」できる時代になってきた。完治に至る道はまだ遠くても、治療を経て長く生きる人の存在は「希望」につながる。

 ●5度の脳転移経験

 乳がんの手術後、間もなく肺に転移。さらに5度の脳転移を繰り返しながら、治療で完全寛解し、すでに5年が経過した人がいる。兵庫県芦屋市在住の主婦、田村博子さん(62)だ。

 田村さんに乳がんが分かったのは2007年。近親者に乳がん経験者が多く、10カ月前に検診を受けたばかりだった。診断した医師は「こんなに早く進行する乳がんは見たことがない」と言った。手術を受けた時点で、田村さんのがんは「ステージ2」。しかし術後7カ月で肺への転移が分かる。「もう未来はない」。大学生だった娘と夫(63)との3人家族。「余計な心配をかけたくなくて、しばらく言えなかった」という。2週間後、ようやく2人に事実を告げた時、夫は肩を落として静かに泣いた。

 田村さんの乳がんは「トリプルネガティブ」というタイプで、再発転移すれば抗がん剤しか治療の手立てがない。しかし、術前の抗がん剤治療はあまり効果がなく、また術後に再発予防の治療をしたにもかかわらず、すぐに再発した。執刀した兵庫医科大乳腺・内分泌外科部長の三好康雄医師からも「分かっていると思うけど、もう治らない」と告げられた。田村さんは三好医師に「治らない治療なんていらない!」と悔しさをぶつけた。

 ●患者は治りたい

 一度は「がん治療のリングから降りよう」と思ったものの、何もせずに死にゆく自分を見守る家族の気持ちを考えると、無治療は選べなかった。「一番効果の高そうな薬を試して、それがだめなら即、緩和ケアを」と田村さんは心に決め、懇意のクリニックの医師の薦めで、抗がん剤の専門家である腫瘍内科医の意見を聞くことにした。そこで出会ったのが、現在は明和病院(兵庫県西宮市)の腫瘍内科部長を務める園田隆医師だった。

 「電話で病状を話すと、明日すぐに家族と来るようにと言われて」。園田医師は目の前でいくつかの治療計画を示した。そのひとつに田村さんの心が動き、相談を受けた三好医師も「この治療は効くかもしれない」と、背中を押した。

 「田村さんに『治りたい』と言われて、実はびっくりした」と三好医師は振り返る。患者は、たとえステージ4でも治癒を願うはずだ。しかし当時も今も、「再発すれば治らない」が医師の常識で、患者も本音がなかなか言えない。三好医師は、医者の意識と患者の気持ちとの間に、いかに距離があるかを思い知らされたという。

 さらに「田村さんのその後の経過を見て、『こういう人もいる』ことを教えられました」。ここ数年で良い薬が増え、特に乳がんのあるタイプで「完全奏効」する例は増えている。田村さんの症例をきっかけに「ステージ4でも、治るチャンスがある人には治すための治療を」と、三好医師の意識は大きく変わった。

 田村さんが選んだ治療は、ある薬剤を使い、抗がん剤が効かなくなることを阻止するものだった。「ガイドラインにはない治療だから、大学病院などではできない」と解説する園田医師は、もともと血液内科の医師だった。「白血病抗がん剤で治癒が見込めるのに、乳がんをはじめ固形がんは、なぜ治らないのか」。園田医師は臨床の経験を踏まえ、ガイドラインを基本にしながらも「工夫」を加えた治療を続けてきた。「特に乳がんは若い患者が多い。治る可能性がある人をみすみす死なせるわけにはいかない」。園田医師の言葉に熱がこもる。

 ●「コツコツ続ける」

 田村さんが受けた治療は、同じ乳がんでも全ての人に有効なわけではない。いざ治療しても奏効するとは限らない。しかしステージ4のがん患者の命を、より長く延ばし、根治を目指すことが園田医師の仕事だ。難治の膵臓(すいぞう)がんに対しても、同じ治療で手応えを感じている。エビデンス(科学的な根拠)を作って、より多くの患者を救いたいという思いもあるが、臨床試験を行うにはいくつもの壁がある。今は「職人のごとく、コツコツと自分の仕事を続けるだけ」と園田医師は話す。

 田村さんは肺転移の寛解後、今度は脳転移を5度も繰り返す。それでもその都度、三好医師、園田医師、さらに脳外科医のサポートを経て完全寛解に至った。「医師とは当初、言い争うことも多かった」と田村さんは笑う。田村さんは長くパタンナー(衣服の型紙を作る仕事)として働いていた。「医師とは得意分野が違うだけ。人間としては対等だと思っています」

 田村さんの話を知った患者からの相談も絶えない。「自分の経験は話せても、特定の治療を勧めることはできない」と田村さん。まずは患者自身が目の前の医師の説明をきちんと理解すること。そのためには自ら勉強する必要がある。それもないまま、別の治療法を求めてふらふらするのは決して良いことではない。信頼できると思った医師ととことん付き合い、悪い結果も受け入れる覚悟を持つこと。「患者には患者の仁義があります」

 田村さんが完全寛解に至った理由を証明することはできないが、三好医師は「やはり園田医師の治療が効いたのだと思う」と話す。がんに特効薬がない限り、再発転移患者の治療は常に手探りだ。「個々の患者に合わせた個別化医療によって、マイナスの治療を選ぶ可能性もある。だからこそ、患者自身の意思を尊重しながら、共に病に向かうことが必要」と三好医師は話す。【三輪晴美】=随時掲載

完全寛解
 全てのがんが画像上、消失している状態。完全奏効とは、抗がん剤放射線治療によって、全てのがんが4週間以上画像から消失したことを指す。いずれも画像上に表れないがんが潜んでいる可能性があり、治癒とは言えない。

ガイドライン
 科学的根拠に基づき、現在行える最善の治療である「標準治療」を示し、一般的な患者に当てはめるもの。ただし、再発患者の場合は病状に大きな差異があり、当てはめることが難しい場合もある。その際は患者の価値観を基準に、医師と患者が十分話し合ったうえで治療法を決めることが必要だ。

ステージ4で完全寛解!!そんなこともあるのか、と驚いた。

私の父は腎盂ガンステージ4で、4か月の治療もむなしく亡くなってしまったが、やはり「治りたい」という一心で辛い抗がん剤の治療にも耐えていた。

もしかしたら、緩和ケアに行く前にもっと何か治療法があったかも知れないな、と今でも思う。

あきらめずにコツコツ続ける、必死に探す。5度の脳転移も乗り越えたなんて、すごい。大いに励まされる記事だった。