一人暮らしの父が亡くなり空き家になった実家。その売買を依頼していた不動産屋から、昨日の昼に電話があった。
「ご実家を買いたいと希望されてるお客様がいらっしゃいます。」とのお話にびっくり仰天。
「突然のことで驚きました。主人とも、そんなに早く売れることはないだろうと話していて。片付けもゆっくりやっていこうと思っていたんです。」と私。「実は先月からお話はあったんですが、本格的な話になるまで待ってました。多少ローンを組む必要があるとのことで、今日これから、先方と銀行に相談に行く所です。」と不動産屋。先方はなかなか、本気モードの様子。
「それでしたら、父の三回忌で11月初めの三連休に実家に行く予定にしてるので、その時に実際にお会いして先方とお話をさせていただく、ということでどうでしょう?」と提案すると、「それは丁度良いですね。では、そうさせていただきます。」と、トントンと予定が組まれた。
「売価を安く設定していただいたので、それが決め手になったようですよ。出来れば、年内中に引き渡ししていただきたいとのご希望です。そうなると、仏壇の処分とか、家具などまだ残ってるものの引き上げ、片付けなどもありますよね。これから、そのあたりを相談していただくことになると思います。」と不動産屋。
売価が安い。そうか。最初に売りに出した時の半値近くに下げていた。土地代よりも安いくらい。果たしてこれで良かったのかどうか。不動産屋に払う分やらなにやら差し引くと、さらに悲しいくらいの金額になる。それでも、負の遺産を抱えてるよりはいいのかな。
気がかりなのは仏壇の処分と家具等の片付け。
田舎の実家の大きな仏壇。まずはお寺さんに来ていただいて、魂抜きの読経をしていただいてから処分しなければ。片付けは不動産屋が業者に依頼してということも出来るらしいが、その見積もりと。
そして、書類だの写真だの思い出の品々だの、どうしても見て確認しておきたい所も、まだまだあるわけで。
そんなあれこれや、いざ契約など、300km離れた実家への往復や、仕事の休みの調整、実家は秋田なので雪が降る前になるべく済ませたいとか考えると・・・。
「年内中に引き渡し希望」とういうのも、なかなか大変なことではある。
「実家が売れるかも!」と、すっかり舞い上がって夫にメールしたものの、(おいおい、ちょっと待て私。ここは少し冷静になって、メリットデメリットを考えなきゃ。)と方向転換。
夜になってから夫と話し合った。
「売れなきゃ売れないで悩む所だけど、いざ早く買い手がつきそう、なんてことになると、なんだかもったいないような気もする(笑)。人間ってわがままだよなぁ。」と夫。本当にそうだ。
「もうすぐ定年退職するから、そうしたら別荘がわりにして、ゆっくりと田舎生活を楽しもうと思っていたよ。どうせ売れないだろうから、あちこち手入れして、畑も作ったりして。それが出来なくなるなぁ。親戚からもきっといろいろ言われるだろうな。」
実家が自分の手から離れるというのは、なんだか「消滅する」みたいで、私も寂しいような気がしていた。
とはいうものの、夫と二人で車でしょっ中300kmの距離を移動するのも、夫に負担を掛けてるようで申し訳ない。
その思いを夫に伝えると、「そんなことないよ。田舎の大自然に囲まれてゆっくりと癒されて、良い気分転換になるし、楽しみになってたよ。」と夫。意外だったしありがたかった。
さて、どうなることだろう。
この先、どう考えても「負の遺産」になる空き家。欲しい人がいるうちに売った方が良いに決まってる。そうすれば、固定資産税も電気・水道代なども不要になる。メンテナンスも雪の心配もない。墓守とお寺の法要関係さえ、やっていけば良いのだ。
しかし、墓参りに来ても法要に来ても、もはや寄る家もない。近くの温泉施設にでも宿泊すれば良いか。
父の三回忌を目前にして、心は揺れる。