主治医から父の現在の病状と今後のことについて、お話があった。
入院前に撮ったCTを見せて丁寧に説明してくれた。原発巣の腎盂ガン。大動脈のすぐ横のリンパ節、かなり大きい。肝臓にも転移あり。多発肺転移、肺にも小さな転移がたくさんあった。
「手術できないので抗がん剤をしましょう、ということになったんだよね？でも、完全には治せない、少しガンを小さくして、大きくなるのを遅らせる程度、とお話ししたと思います。この抗がん剤の副作用がひどくて、食欲不振と下痢が大変でしたね。」
「でも、抗がん剤は良く効きました!!腎盂の腫瘍は半分くらい、リンパ節も半分くらいの大きさになりました。肺にたくさんあった腫瘍も小さくなった。このくらいだと、ほとんど症状は出ないと思います。肝臓の転移は変わらないくらいかな。」
抗がん剤2回終了後のCTを見せられた。本当だ。感動的なくらい小さくなっていた。
「でも、副作用がひどくて本当につらかったんだよね。もうやりたくないでしょう？抗がん剤はもうやらないことにしましょう!」との主治医の言葉に、「後はいいです。もうやりたくありません。」と父。
今まで3、4回もチーム医療の先生たちに「余命がどのくらいなのか教えてもらいたい。」と話していた父だったが、これまではうやむやにされたままだった。今回の先生は、一番最初から外来で診察してくれていた先生で、ようやくハッキリと教えてくれた。
「最初に外来で診させてもらった時は、年末くらいまでしか持たないかな？と思いました。今のこの状態だと、年は越せそうかな？と思います。」
聞いた直後は少し明るい未来？に思えたが、自宅に戻ってから考えると、年末まで持つか、年を越せるか、なんて微妙な差でしかない。あんなに抗がん剤で苦しんだのにそれくらい？
「ただし、治療をやめればガンは大きくなります。転移も広がります。痛みも出てきます。」とキッパリ。「大きくなる可能性があるということですか？」と聞いたら、「いえ、大きくなります。」とキッパリ。
「当分は外来で診させてもらいますよ。対症療法になります。まずは退院して○○日に来てください。あとは12月かな。自宅で普通に好きなように過ごされてください。1か月半の入院で体力は落ちてますが、徐々に戻れば今まで通りの生活が可能ですよ。」
ちょっと待って、と心で叫んだ。明日、面談に行くことになっているホスピスの件は？
「今回、紹介状をお渡ししましたが、紹介されて行っても、多分、自宅で過ごすことを勧められて帰ってくることになると思います。今までも何人も紹介しましたが戻ってきました。ホスピスはもっともっと苦しくなって、ご飯も全然食べられないくらいの人が行く所です。」
えっ、そうなの？
「このくらいの状態なら、自宅で普通に生活出来ますよ。まだもう少しの間は。わが県では本当のホスピスはあの病院だけなんです。待ってる患者さんがたくさんいます。小さい所だから、殺到するんですよ。」
気になっていることをいろいろ聞いてみた。
「急変するようなことはないんですか？」「今の病状だと急変の可能性は少ないですよ。ほとんど症状は出ないと思います。」
「便器が真っ赤になるくらいお尻から出血したのは？」「抗がん剤の副作用がひどくて腸の粘膜が荒れたことが原因でしょう。」
「呼吸が苦しくて呼吸困難になる、とよく訴えているのは、肺に転移してるからですか？」「肺転移のせいではありません。ひどい胸やけ、逆流性食道炎のためだと思います。」
長い入院生活の間、たまっていたモヤモヤが解消。スッキリしたかに思えたが、納得できないこともいろいろ。
病室に帰ってから父に「余命とか聞いて大丈夫？ショックじゃない？」と聞いたら、「いや、教えてもらって良かった。これでいろいろ準備が出来る。ありがたい。」と言っていた。
ギリギリまで一人で頑張るという父。大丈夫なのだろうか？肝臓にまで転移してるなんて、今日初めて知った。
