rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

抗がん剤やめる宣言

昨日、病院に着いて父の顔を見たとたん父から切り出された。

「俺は抗がん剤はもうやらない。もうこれでやめる。ここを出て自宅に帰りたい。」

いきなりのことでびっくりしている私に、「前々からずっといろいろ考えてたんだ。今いきなり思いついて言ってるわけじゃない。こんな苦しいだけの治療は嫌だ。緩和ケアに切り替えて痛みのケアだけしてもらいたい。」と訴えてきた。

抗がん剤の副作用で、息苦しさ、呼吸困難がどうにも気持ち悪くて耐えられない。このまま死んでしまうのか、と思えるくらいだ。これはいくら言っても改善してもらえない。食べられないのは何とか我慢できるが、この内臓全体の気持ち悪さ、何ともいえないこれだけは嫌なんだ。」

「さっき、看護師さんに言ったら、『抗がん剤を途中でやめて地元の病院に戻る患者さんや、緩和ケアに切り替える患者さんは、けっこういますよ』と言ってたぞ。今日は連休中で休みだけど、専門の相談員の人に相談することも出来るそうだ。」

いきなりの父の発言にうろたえていると、主治医が慌てた様子で病室に来てくれた。「抗がん剤やめたいって聞いたんですけど、そりゃまたどうして?ガンが小さくなったし、痛みもなくなったんでしょ?効果は出てるよね?」と怪訝そうな表情。

「そうなんですけど。でもこの苦しい治療にはもう耐えられない。もうやりたくないんです。緩和ケアに切り替えてもらいたい。在宅医療とか。もう覚悟を決めました。」と父。主治医に宣言するほどだから、余程のことである。

「緩和ケアですか?まだ全然そんな段階じゃないよ。だって抗がん剤の効果も出てるし。まだしばらくはガンとダラダラ付き合っていけると思ってた。まだまだ治療の余地はあるんですよ!だって、自力で歩いて通院出来るでしょ?緩和ケアっていうのは、もっと弱って自分でいろんなことが出来なくなってから、ですよ。在宅医療なんていったって、受け入れ側の家族がしっかりしてないと出来ないし、まだ全然そんな状態ではないですよ。」

「うーん、それじゃあ、一度退院しますか?一度自宅に戻られて、少ししてから3回目の抗がん剤をやる、という手もある。退院して2、3か月に一度くらいこの病院に通院するのは出来るでしょう?」

主治医も一生懸命になだめてくれたが、本人の意志は固そうである。

「前回の副作用の時も気持ちがドーンと落ちたでしょ?今回もそうだと思うんだよ。そのあと元気になって抗がん剤2回目やったんだよね。もう少し元気になってから考えてみませんか?」それまでちょっと保留、という提案をして去って行った。休みなのにわざわざ来てくれたらしい。

すわ、退院か?しかし、そうなると私がずっと一緒にいないと無理である。もうすぐ自宅に帰ることになっているし、仕事にも復帰しないと。ああ、どうしよう。

「お父さんの気持ちは分かったから。とりあえず、体力回復しないことには退院しても大変だから。もう少しの間、入院はしていようよ。」となだめた。

「今後のこともあるから、親戚にいろいろ相談したい。お前から連絡して呼び出してくれ。」と父に言われ、父から見て甥と姪に連絡。いとこのあっちゃんにもメール。みんな驚いて「どういうことなの?」となり、その説明やら対応やらに追われた。くたびれた。

いとこのAちゃんはナースなので、「叔父ちゃん、入院してから1か月でしょ?一番嫌になる頃なんだよね。イライラしてナースに当たったり、他の患者さんとトラブル起こしたりする人が多いんだよね。叔父ちゃんも我慢に我慢を重ねてたけど、とうとうここに来て爆発したのよ!爆発なんだと思うわ。そこを越えると、また治療に前向きになって頑張れたりするんだけどね。今が一番つらい所だわ。」とさすがにプロ!と思える発言。そういうものなのか。

カーテンに仕切られた病室のベッドだけが自分の居場所。しかも父のベッドはいつも廊下側。

病室は4人部屋でトイレが付いている。下痢と頻尿に苦しむ父はトイレの近くを希望したのだが、外の景色も見えず、朝なのか夜なのか、暑いのか寒いのかもわからないような日々。

食べられないのでもうずーっと点滴。体がしんどいので横になってることも多い。元来活動的な人なので、この状態はかなり辛いに違いない。

「でもやっぱり、叔父ちゃんには抗がん剤を3回ちゃんとやってほしいわ。」とAちゃん。苦しみが実感できるだけに、私はちょっと微妙。父を苦しみから解放してあげたいという思いもある。

少しして父の甥と姪(私から見ていとこ)、姪の夫の3人が来てくれた。

父は思い切り自分の思いをぶちまけた。が、結局みんな「やっぱり抗がん剤を途中でやめるのは良くないよ。3回目まで頑張って。今、退院したってどうするの?一人で生活するわけにいかないでしょ?」という意見。全員から頑張れ、頑張れ、と言われてた。

「こんな副作用で苦しいだけの毎日、嫌なんだよ。今朝なんか頭痛もして来て。精神的にまいってしまいそうで。本当に嫌になる。」父は切々と訴え続けた。

「1か月もベッドに縛り付けられて外も見てないんだものね。窓際のベッドに変えてもらったら?」ということになり、今日、病室移動となった。

昨日爆発したせいか、今日は幾分穏やかな父だったが、「トイレが遠くなって間に合わなくて病衣を汚してしまう。俺はだから廊下側の方がいいのに。なんでわかってもらえないのかな。」とブツブツ言っていた。納得してるわけではないようだ。

80才の父にこんなにつらい思いばかりさせて。効果はあるけれどどうなんだろう?抗がん剤。そこまで苦しむ必要があるのか?

そして退院となったら、私が仕事をやめて移住するしかないのではないか?「自宅は放ったらかしでいいのか?」と夫に言われた。でも、弱ってる父を一人には出来ない。これから冬に向かうので行ったり来たりも大変だし、豪雪地帯だから雪かきもしないといけない。

悩み事、解決策が見つかると良いが、この問題はなかなか簡単に解決できそうもない。