rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

「暗いところで待ち合わせ」を見た

乙一という人の作品が若い世代で人気なんだよ。暗いのも多いんだけど。不幸な人がさらに追い打ちを掛けられるようにひどい目に遭ったり、人の心の黒い部分を描いたり。心がえぐられるような部分もあるんだけど、なんかいいんだよね。」
「でさ、この“暗いところで待ち合わせ”という映画の評判がいいから、今日はこれを見よう。」
というわけで、次男おすすめのこの作品を見た。

〜あらすじ〜
視力を失ったミチル(田中麗奈)は、父(岸部一徳)と二人で暮らしていた。ところがそんな最愛の父親が突然、病死。ミチルはたった一人の生活を始める。彼女の家の目の前には、駅があり、電車の音が聞こえる。ある朝、いつものように急行電車がホームを通過する音が聞こえた。しかし、いつもと違ったのは静かな朝を切り裂くように鳴り響く電車の警笛、耳障りなブレーキ音……その音の違和感から、何かが起こったという胸騒ぎを感じた。午前9時5分、突然家のチャイムが鳴った。ドアを開けるミチル。彼女の問いかけにも全く呼応せず素早く家の中に忍び込んだ男の名前は大石アキヒロ(チェン・ボーリン)。TVのニュースでは、今朝起こった駅での転落事故の重要参考人が、現場から逃走するところを目撃されているアキヒロであることを報じていた。それからもミチルは、いつもと変わらず、ほとんどを家の中で過ごしていた。ミチルは生活の中で、何か違和感を感じ始める。朝食用の食パンが減っていたり、夜物音がするだけでなく、かすかな人の気配を感じ始めていた。こうして、殺人事件をきっかけに、ミチルとアキヒロの不思議な共同生活が始まった。
(ネタバレあり↓)
主人公は視力を失ったミチル。家に転がり込んでくるのは、中国人ハーフとして差別を受けているアキヒロ。息をひそめて生活しているので、全編を通してセリフが少なく、静寂に包まれた作品だ。

田中麗奈の演技が素晴らしくて、本当に目が見えない人のよう。ハラハラドキドキしながら見守るような心境で画面に釘付けになる。一人ぼっちでけなげに生きているピュアな女性を見事に演じきっていて、ミチルそのもの。

殺人事件の容疑者で逃亡中のアキヒロがミチルの家に忍び込み、息を潜めて生活しているシーン。目の前をスレスレに通るけれど見えていない、という所がスリリングに描かれている。

目の見えないミチルがイスを使って食器棚の上にあるものを取ろうとして滑り落ち、あわや大怪我!という所で落ちてきた土鍋をアキヒロがキャッチ。助けてくれたことから、同居者(うすうす気づいていた)の優しさを知る。

ミチルは初めて料理を2人分用意し、柔らかく微笑む。このシーンがじんわりとあたたかい。孤独な2人の優しさが絡みあい、ほっとするようなひととき。目が見えない女と職場で差別されていた男。弱者に対する作者の目線のあたたかさが感じられた。

父親が亡くなって1人になってからは、ミチルのつまびくピアノはメロディのみだったのに、このシーンの後からは両手でしっかりとハーモニーを奏でるようになった。スリリングなサスペンスなのに、じんわりじんわり沁みてくる。

そして、最後の展開にはとてもびっくり。井川遥の演技も素晴らしい。

乙一さんって、実はすごく繊細で優しい方なんじゃないかな?と私は思った。罪を犯してしまった人にも優しいまなざしを向けてるような。

じんわりじんわりあたたかい。良い作品だった!私は好きです。