rosa8719の今日もご機嫌

59才で2回目の乳がんに。息子二人は独立し夫と二人暮らし。一日一日をご機嫌に。

正常性バイアス

昨夜、何気なくNHKスペシャルを見た。

3月11日の東日本大震災で6人に1人が亡くなったという、宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区を取り上げていた。

近所の友人のご主人は、車で実家に向かう途中、閖上(ゆりあげ)街道で亡くなったのだ。その時の生々しい映像を画面で見た。怖かった。

NHKスペシャル 巨大津波 その時ひとはどう動いたか

津波が来るかもしれない」という時、人は何を考えどう行動し、何が生死を分けるのか。
人口5600のうち700人の犠牲者を出した宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区。地震発生から津波到達まで1時間以上あったが、何故この地で多くの住民が犠牲になったのか?被災翌朝から当地区に入り取材を継続してきたNHKでは、住民5600人の詳細な安否情報を落とし込んだ色分けデータ「被災マップ」、津波が来るまでの間に何を考えどう行動したのかを聞き取りした「行動心理マップ」を作成した。そこからは、私たちが災害などの非常時に陥りがちな「心の罠」が生死を分ける大きな鍵を握っていることが分ってきた。
災害時、人はどういう罠に陥るのか?番組では、集めた膨大な住民の証言や、津波襲来まで街中を撮影した数百枚の写真、さらに災害心理学の専門家の分析を交えながら、「被災マップ」を徹底的に読み込んでいく。そしてこれまで防災対策からも抜け落ちてきた、災害時に陥りがちな心理面にスポットをあてた、「ソフト面」を織り込んだ新たな防災のあり方を提唱する。

地区の地図上の各戸が色分けされて画面上に表示される。「家族全員が助かった家」「数人が亡くなった家」「家族全員が亡くなった家」、地震発生から津波襲来までの人々の動きを詳細に映し出していた。

キーワードは、正常性バイアス”“同調性バイアス”“愛他行動”災害心理学の第一人者だという東大の教授が詳しく解説していた。

巨大地震の直後、不思議なことに町の中はしーんと静まり返っていた。壊れた家具の修理に熱中したり、壊れて散らばったものの整理をしたり、掃除したり。外に飛び出したりパニックに陥るようなこともなく、町の中には人っこひとりいなかったそうである。

これが正常性バイアスと言われるもので、何か大変な事態に遭遇した場合、人間は無意識のうちに、(大したことじゃない、大丈夫、大丈夫)と冷静さを取り戻して普通に対処しようとしてしまうのだという。

2003年、韓国のテグ市で地下鉄事故が発生し大惨事となった際も、煙がもうもうと立ち込める地下鉄車内から動こうとしなかった人たちが、犠牲者になってしまったらしい。危険な心理であるようだ。

地震から数分後、今度は家の外に出て、近所の人たちと立ち話をして情報交換をする姿があちこちで見られた。この時もパニック行動を起こすようなことはなく、のんびりとした雰囲気さえあったようだ。みんなと同じ行動をとっていれば大丈夫だろう、と考える。これが“同調性バイアス”

その時、何かの拍子に、「この地震はただごとじゃない!逃げないと!」と気づいた人たちが行動を起こし始める。意識にスィッチが入った人たちだ。周りの人たちに声をかけて逃げるように促す。これが“愛他行動”。1人暮らしで身よりもない老人宅に説得に行き、一緒に避難所に向かう途中に亡くなられた方もいた。

車で逃げてる途中、カーラジオから「10メートルを越える津波が来ます。早く逃げてください!!」と流れてきて、それを大声で叫んだ人もいたようだ。そこで、「大したことじゃない」とのんびり構えていたか、血相を変えて走って逃げたかが、生死を分けたようである。車の渋滞に巻き込まれて、車を捨てて逃げた人は助かり、常識的に並んで待っていた人は津波に飲まれた、という話は震災後何度も耳にした。

地元なので生々しい九死に一生体験談はいろいろ耳にする。「急いで逃げろ!!」という声が飛び交っていた時も、交差点を右に曲がったか左に曲がったかで運命が分かれた、とか、走って逃げてる時に後ろから津波が来てるのが見えた、とか。自分の車の窓から外に出て、車の上に乗ってしばらく漂流した、とか、流れてきた電信柱につかまって助かった、なんて話がゴロゴロしている。

すごい番組だった。津波に飲まれていく映像が生々しくて、夜中に怖くて目が覚めた。でも、これは知るべき現実なので、見逃した方はぜひ再放送を見ていただきたいと思う。

もしかすると、乳がんになってからの自分の行動も、これと似たようなところがあるかも?などと思った。サバイバーとしての意識状態が似てるのか?

パニックになって泣いたりすることもあるけれど、わりと冷静で平常心を保とうとするし(正常性バイアス)、ブログなどで自分と症例の似た人を探そうとするし(同調性バイアス)、「みんなで頑張りましょうね。」なんて声掛け合うし(愛他行動)。

昨日、番組内でインタビューに答えていた人たちは、「家族が亡くなって自分ひとりだけ助かった」という方も何人かいた。でも、必死に前を向いて明るく生きていこうとされてるようだった。厳しい現実に負けないで!とエールを送りたい。