数日前の職場での昼休み。病院から携帯に不在着信があったことに気づいた。すぐに電話をすると、
「ドクターからの呼び出しです。27日に受診するようにとのことで。」と看護師さん。「えっ?何かあったんですか。」と聞くと、「えーっと、検査結果の最終のが出たから、それじゃないかと思うんですけどね。」とのことだった。
呼び出し=悪いこと?
胸騒ぎを覚えつつも
「検査結果がどうあれ、そこにはただ現実があるだけなんだ。その現実に淡々と対処していく以外にないのだ。どんなに悲惨でも真実は真実。」
と、ちょっと覚悟を決めた。
外来はものすごく混んでいて、私の予約の枠(30分単位?)にすでに10人が入っているとのことだった。1日掛りかなー、と遅めに行って座っていたら、30分も待たないで呼ばれた。
「今日、お呼びしたのは実は・・・。」とドクターが話し始めた。
★HER2(ハーツー)遺伝子の増幅
現在、HER2の状況を調べる代表的な検査としては、HER2タンパクの量(過剰発現)を調べる免疫組織化学染色法(免疫染色、IHC法)と、タンパクをつくるもととなるHER2遺伝子の量(増幅)を調べるFISH法の2種類がある。
私の場合、IHC法では境界型でスコアは2+(最大で3+)だったので、FISH法でさらに精密に調べた結果、「境界型というよりはむしろプラスの方、遺伝子の増幅あり、増殖因子30%」ということがわかり、ハーセプチン(分子標的薬)の適用になるとのこと。ホルモン感受性も高く、ER(エストロゲン)はプラスで90%、PgR(プロゲステロン)もプラスで数値は覚えていない。なので、ホルモン療法とハーセプチンを並行して行う治療をすすめたい、とのこと。
「ハーセプチンを単独では使用出来ないので、抗がん剤のFECを4回行った後、ハーセプチンを18回の予定です。どちらも3週間に1回。抗がん剤とハーセプチンの初回は1泊入院で。ですから入院5回。1年3ヵ月くらい掛かります。」
「これはあくまでも再発予防のための治療です。絶対にやらなければいけない、というものではありません。あくまでも、患者さんの希望に沿った形での治療になりますので、患者さんに決めていただきたい。ご家庭の事情もあるでしょうし、急ぐこともないので、時期も選べます。やるとしたら積極的な治療を選んだことになります。知らなかったことで不利益を受けては申し訳ないですから。」
「うわぁー、どうしよう。悩んじゃうなー。」と、思わず口走る私。そう言いながらも心の中はすでに決まっていた。しかし、ハーセプチンは高価だったはずだし、抗がん剤でハゲるからカツラも必要だろうし、副作用にあえぎながらも仕事を続けて行けるのだろうか、などなど頭の中を色んな想いが駆け巡る。
「次回の診察の時にお返事を聞かせてください。」と、ドクター。ものすごく忙しいはずなのに、相変わらず丁寧にじっくりと説明してくれた。淡々としながらも、いつも変わらないって大変なことだと思う。これからますますお世話になるだろう、と思うと尊敬の念が湧く。
癌遺伝子HER2があるということは、増殖しやすく、再発も転移もしやすい、タチの悪い癌だということだ。それが、ハーセプチン(分子標的薬)という新薬が登場したお陰で、逆に「治療しやすい」とまで言われるようになったのだという。
抗がん剤よりも副作用はマイルドで、癌遺伝子そのものに働きかけるので、正常細胞がダメージを受けないのだとか。
ハーセプチンがない時代に生まれていれば、私の場合、あっという間に再発・転移して・・・。と思うと、「ホルモン療法も良く効く」「ハーセプチンも使える」というのは、「打つ手が多い」ということでもある。(究極のプラス思考?)
早期で見つかって、腫瘍も小さくて、なんてノンキに構えていると、こういう落とし穴があるのよねー。フルコースだ。でも、新しもの好きな私は、ハーセプチンを使えることには、ものすごく興味が湧く。
来年もまだまだ乳がんとの闘いは続く。